『第48話』焼き芋と紫陽花

思い出

第48話

優しい彼女

蒸し蒸し…
ジメジメ…
最も苦手な、蒸し暑い梅雨の時期がやってきました。

紫陽花が咲くこの季節になると、ある人のこと思い出します。
その人とは…
私より少し年上の、とても思いやりのあるやさしい同僚。

入社した年は同じなのですが、彼女は私と違って、とても真面目で几帳面。
でも身体はあまり丈夫ではく、通勤の満員電車がつらいと嘆いていました。

何年か前のこと、私は大量の荷物を発送しなければならなくなり、一人で汗だくになって準備をしていました。
そこへ、たまたま通りかかった彼女が、荷物の多さに驚いて、何も言わずに手伝ってくれました。
全然違う部署なのに…
彼女自身とても忙しいのに…

あの時の嬉しさと言ったら…
涙が出るほど、ありがたかった…

毎年バレンタインになると、彼女は『お返しは絶対いらないからね!!』、『単なるおやつだからね』と言って、相手に負担をかけないよう心配りをしながら、周囲の人たちにお菓子の詰め合わせを配っていました。

ご厚意に甘えて、お返ししてなくてごめんね…

焼き芋と彼女

そんな彼女の好物は、焼き芋!
時々、地元で人気の焼き芋専門店を訪れたりするんだと、嬉しそうに話してくれたことを覚えています。
その話を聞くまで、私は焼き芋にまったく興味を持っていませんでした。
でも彼女がそんなに言うんだったら…
と、試しに近所のスーパーで売っていた焼き芋を買って、食べてみました。

うまっ!!(笑)

なにこれ~

あなどっていたけれど、焼き芋ってこんなに美味しいんだ~
あまりの美味しさに、家族みんなで感動。

家でも作れないかなあ、といろいろ試してみたけど、どう頑張ってもあの美味しさには近づけない。
専門店に足を運びたくなる理由に納得です。
焼き芋の美味しさ、素晴らしさ、奥深さを教えてくれた彼女に感謝!

2年前(2021年)のゴールデンウイークが明けた頃のこと。
彼女は体調を崩して、とてもつらそうにしていました。
でも仕事は休まず、病院に通いながら、普段通り会社に出勤しているようでした。
少しふくよかだった彼女の体型は、いつの間にかほっそり。

「無理しないようにね」
「お大事に」
「早く良くなるといいね」
「ゆっくり休んでね」
頑張っている彼女に、私たちはこうした声を掛けるしかありませんでした。

「お先に失礼しま~す。」

その日も、彼女は仕事を終え、私たちに軽く会釈をして会社を後にしました。

「大丈夫かな~?彼女」
「最近すごく痩せたよね」
私たちは、彼女が早く元気を取り戻してくれることを心から願いました。

でも…
翌日になっても…
その翌日になっても…
何日経っても、彼女が出社してくることはありませんでした。

彼女はひとり遠い世界に旅立ってしまいました…

こんな、突然すぎる。
なんで、こんなことになっちゃんたんだろう…

それから、いろんなこと考えました。
たくさん、たくさん考えました。

あなたから学んだこと、無駄にしないように生きていきたいと思います。
いろいろとお世話になりました。
ありがとう!!

ツバキのつぶやき

母のツツコが植えた紫陽花が初めて咲きました。
とってもとっても小さな花ですが…

どんな環境であっても、誰のためでもなく、ただ一生懸命咲く花。

心が癒されます… (*^-^*)

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